今年で9回目となる「横濱インディペンデント・フィルム・フェスティバル」が11月9日に開催された。269作品の応募の中から14作品が選出され、横浜にある映画館シネマ・ジャック&ベティにて上映と授賞式が行われた。

映画界で活躍する監督も数多輩出している長編部門最優秀賞には『ある運び屋の鍵』が選ばれた。同作監督の森幸光さんは65歳の新人監督。長編映画は本作が初めての制作になったという。
某最大手企業でサラリーマンとして働く傍ら制作されたという本作は、製作費の全てが自分の持ち出しである所謂「自主映画」である。クラウドファンディングなども活用しつつも製作費のほぼ全てを自費で賄い、撮影は仕事のない休日を使いながら3ヶ月かけて撮影された。しかしそんな森さんが映画制作を始めたのは57歳だったという。
会社員生活30年目にしてガンに倒れた森さんは、病床にて「やりたくてもできなかったこと」をリスト化した。幸いにも病状は回復し、退院後は「キューバのビーチでバカンス」「アマゾンのジャングルで釣り」など次々夢を叶えていくが、そのうち最も難しいと思っていた夢が「映画を作る」ことだったという。映画学校に入学し短編映画を多数制作するも、グランプリに輝くことはなかった。

『ある運び屋の鍵』は裏社会の運び屋が陰謀に巻き込まれていく物語。全編に渡って登場人物たちには「死」のオーラが纏わりつく。制作に際し監督は、途方もない段取り、連日の撮影、撮影日の翌日からまた始まる平日1週間と、長編映画制作の大変さを前に幾度となく「これが最後の映画」と述べていたという。
受賞に際しては「もうちょっと頑張ってみようと思う」と笑みをこぼした。『ある運び屋の鍵』は2025年公開予定。森さんの冒険はまだ始まったばかりだ。

文・二階堂方舟


コメントを残す